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アクテム・ジーワン オーディオ レポート

第一回 プリアンプ編
第二回 パワーアンプ編
第三回 マルチアンプシステム編
第四回 チャンネルディバイダ編
第五回
 電線編
第六回 静電容量編
第七回 負帰還編

***********  第一回 プリ・アンプ編  ***********

  

はじめに
1952年、静岡大学工学部電気工学科に学生として在籍中、趣味でオーディオアンプを作り初めて以来、アンプ作り45年、真空管アンプ、バイポーラ トランジスタアンプ、FETアンプを経て、UHC MOS FET DC Power Amp に辿り着きました。やっと満足できるパワーアンプが出来たので、プリアンプとチャンネルディバイダを洗い直すことにし、ここ数ヶ月はプリアンプのテスト、チャンネルディバイダの改良に取り組んでいます。そこで、今までに経験した意外な事実、設計試作中の体験、製造過程の要点などを思い着くままに述べます。

プリアンプについて
 ここでいうプリアンプは、高級機に多いプリメイン別ケースに納められたセパレート型アンプのプリアンプを意味します。
 
 CDプレィヤーにはリモコンで音量調整ができるボリュームがついているものがあります。最近はこの音量調整が音質劣化につながるので嫌がって使わない人が多いためか、付いていないものが出回っていますが、もしついているものをお持ちでしたら、その出力を直接パワーアンプの入力に接続してみてください。CDプレィヤーに音量調整がない場合には、特性の優れたパッシブアッテネータ(ボリュームのみでアンプがない)を介して接続してください。CDプレィヤーのダイレクト出力端子から出力するよりは若干音質は劣るかも知れませんが、相当の音量でスピーカを鳴らすのに十分な出力が得られます。次にテストするプリアンプをCDプレィヤーとパワーアンプの間に入れ、プリアンプのボリュームを調整して、プリアンプなしで鳴らしたときと同じ音量に調整します。このとき、音量を正確に合わせることが大切で、VUメータがあると便利です。少しでも違うと人間の耳は音質が変わったように感じます。入力切換スイッチとボリュームは音質を損なうことはあっても向上させることはありませんので、プリアンプの挿入によって音が悪くなった場合はスイッチとボリュームを含めたプリアンプのラインドライブ機能がCDプレイヤーのドライブ機能より劣っています。CDプレイヤーのラインドライブ機能が優れている場合はどんなに優秀なプリアンプを入れても音はよくなりません。このとき、プリアンプは入力切換と音量調整のためにのみ存在するといえます。それならいっそうのことアンプなしでということで、入力切換スイッチとアッテネータだけのプリアンプ?(減衰器であって増幅器ではないのでアンプというのはおかしい)が売られていますが、いいものはかなり高価ですし、これとて問題がなくなるわけではありません。アッテネータには分圧型、定インピーダンス型などがあり、入出力抵抗も様々なうえに分圧型は音量調整によって出力インピーダンスが変化するので、長いケーブルを負荷とするのは苦手です。

 手持ちのCDプレィヤーにUHC MOS FET DC Power Amp を直接接続したときと、間にDCプリアンプを入れたときの音質の変化をいろいろなCDを使って慎重に比較したところ、プリアンプの挿入によって、音に張りがある、切れ味がいい、分解能が上がるというような音の改善が見られました。そこで、国内の歪率計などを製造しているメーカーが販売しているプリアンプユニットを用いたプリアンプに取り替えてみたところ、音が曇り、切れ味が悪くなり、カーテン越しに聞いているような感じになり、プリアンプなしのときと較べて音質が劣化しました。プリアンプユニットが原因なのか、ボリューム、内臓リレーなど付帯回路に問題があるのか、まだわかりません。かって、友人宅からUHC MOS FET DC Power Amp を借りた人が、期待した程ではないというので、DC Pri Amp を持って行き、使用していた外国製有名ブランドのプリアンプと交換したことがあります。見違えるような音になり驚きました。このようなプリアンプでは「無いよりまし」ではなく「無いより悪い」ということになってしまいます。何十万もする高価なプリアンプだからといって安心できません。まさかと思われるかもしれませんが試してみてください。

 以上述べたことをまとめると、レコード再生は別として、CDプレィヤーやFMチューナーなどは、通常パワーアンプを駆動するのに必要な電圧を十分に上回る出力電圧を持っています。したがって、プリアンプの本来の機能は、電圧増幅ではなく、入力切り換え、音量調整機能とプリアンプ、メインアンプ間のケーブルとメインアンプを駆動するためのラインドライブです。プリアンプを挿入して音が悪くなるときは、その中のアンプあるいはアッテネータ(抵抗減衰器)に問題があります。

 DC Pri Amp はLine Drive Amp(ラインドライブアンプ)と呼んで頂きたいのですが、かなり長い同軸ケーブルと重い負荷を駆動できるように設計された直流増幅器で、金めっき多接点ロータリースイッチとカーボン抵抗を用いたLパッドアッテネータを音量調整に使用しています。利得は20db、入力抵抗200kΩ、最大出力電圧±25V、直流出力ドリフトはかなり環境条件の厳しいところでも10mV以下、通常数mVです。出力段には20W級コンプリメンタリーPower MOS FET を用い、アンプ部の出力インピーダンスは30Ω以下です。音質劣化を避けるために、無くて済むものは一切とることにしたので、トーンコントロール、ラウドネスコントロール、バランス調整はありません。全段コンプリメンタリーシンメトリー回路を用いて電源オンオフ時の出力電圧の動揺を減らしたため、直流増幅器であるにもかかわらずリレーも保護回路もありません。このようなアンプは怖くて使えないと思われるかもしれませんが、多くの方がこの方式のプリアンプを使っており、過去10年間スピーカの破損事故は一度もありません。電源オンオフ時の出力電圧変動を避け、過大入力事故に対する保護回路を働かすために、メーカー製のプリアンプ、パワーアンプには出力回路にリレーが入っているものが見うけられます。しかし、リレーは古くなれば必ず接点の接触抵抗が大きくなり音質劣化の原因になります。

 プリアンプの設計、製作には、まず、回路設計と平行して、入手可能な素子の選定、選別が必要です。コンプリメンタリーシンメトリー回路では、同じランクの製品を多数購入し、バイポーラトランジスタの場合は2SA**と2SC**のhfe、FETの場合は2SJ**と2SK**のIdsss を測定して大きさ順に分類します。次にその中から2SA**と2SC**、2SJ**と2SK**のペアーをつくりますが、FET の場合、Idsssが同じものでペアーを組むのではなく、実際に使われる回路構成のテスト基板に付けて選びます。Idsss は0.1mAステップで選別してからペアーを組んでいます。動作点にもよりますが、2SJ**のIdsss方が2SK**よりも10パーセントくらい大きいときにバランスがとれることがわかります。選別したコンプリメンタリーペアーが売られていますが、これがどうしてペアーと言えるのか不思議に思えるのもあり、自分で測らないと安心できません。ペアーの歩留まりが悪いときは、購入先を変えてトライします。そんなわけで、手許には山のような選別漏れのデッドストックが残りました。ペアーは基板上で互いに接着して熱結合させることにより、ドリフトが大幅に軽減されます。地元大手楽器メーカーのアンプ製造部門の技術担当者が音を聞きに来られたことがありますが、「メーカーで製造するのは無理ですね」と言っていました。試作したアンプはランニングテストと試聴を繰り返します。

 よいアンプを作る秘訣は無帰還の状態で最良の動作をするような回路設計をし、厳選された素子を使うことに尽きます。トリマーでの大幅なバランス調整は割れ鍋に閉じぶたですし、負帰還で強引に見かけ上の特性をよくしたものは、かならずボロがでます。直流増幅器の場合はすぐに出力電圧ドリフトとなって現れます。電源の電圧安定性、応答性も大切な要素で、長期間にわたり4桁の安定性が必要です。

 図らずも今月、MJ2007年2月号に音のよいアンプ製作で知られた金田氏の記事がでていましたので是非ご覧ください。同じような経験をしていますので、記事に全く同感です。次回はパワーアンプについてお報せします。


(by 師匠A.K.)
2007.02.09

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